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かきあげの思い出

今夜はめずらしく、かき揚げを作りました。

思い出の一品です。


前のブログには、書き連ねていましたが、私は一時期、ロンドンに住んでいました。

貧困学生だったゆえ、住み込みで昼間学生、朝、夜、5歳の男の子の世話
お手伝いさんの手伝いという、いわゆるお金持ちの家の息子さんの世話を手伝う
変わりに家賃と食費が免除されていたのです。

おぼっちゃんはイギリス人と日本人との間に生まれた子で
NYからロンドン駐在中でした。

家族の朝ごはんと夜ごはんも私が担当したのですが
この子、5歳だったのに、なぜかかき揚げが好物で

時折、かき揚げを夕方5時ごろ作っていると、ママと戻ってきた
おぼっちゃんが、玄関から

「かき揚げの匂いがします~」と喜んで台所に走ってきていた
私のかわいい男の子。


かき揚げが好きだったあの子は今頃、NYの大都会の中で、

なに食べてるんだろう・・・。

私にとって、彼は永遠に5歳のかわいいまま、すでに10歳をすぎて
赤ちゃんだったあの子はもういないんだなあ・・と思うと今でもしんみり。

そう考えると、
男の子の母が、ガールフレンドができたとか、結婚すると息子にいわれて
寂しいわあ、といわれるのもなんとなくわかる。


日本にも時折帰り、おじいちゃまに度々、美味しいお刺身とか
ごはんとか食べさせてもらっていたせいか、みょーに、わさびが食べたい
とか、おいしいお魚、食べたいなあ、とか、君、ロンドンのど真ん中で
いわないでくれる??といった調子でしたが、

毎食、毎食、朝からのおしゃべり、お夕食で一日あったことを話してくれながら
食べていた彼のことを考えると

改めて、食事は大切だな、と思います。

ママさんも当然、同じ食卓だったのだけど

私が作った食事に文句をいうこともなく、一年、がんばって食べておられました(笑)


お寿司をつくると、おぼっちゃんは値段を書いて、一皿、一皿に
紙を置いていき

クッキーを焼く時は、粉だらけになりながら、気がつくと4時間経過。

なんでも、時間がかかるのだけど

じっとこらえて、見守る大切さ

今、思い返すと、お金では得れない経験をロンドンでしたのでした。


絵を描く時に、言葉をかけずに同じ部屋で、過ごす。

すこし動くと「どこにいくの?」といわれて、お洗濯部屋に洗濯機
みてくるから、すぐにもどってきますよ、というと、安心したように
また色鉛筆を握る子。

なにを話すというわけでもなく、同じ部屋にいて、座っているだけ、
満足そうに出来上がった絵をみせてきて

説明してもらうと

話しが進んで、また、世界が広がる、

彼はアドバイスを欲しがっているのではなくて、
自分が何を考えているかをとにかく説明したい、

なるほど、なるほど、と話しをきくと、その日、一日が幸せ。


地味な作業ですが、これがとても大切な時間だったのだな、と思います。

昨日、日本から届いた本の中に、家族の勝手でしょう、という
普通の家の食卓の写真が載っていたのですが、これって冗談ですか?と
思えるような、雑な風景に、

「これって普通の範囲」とかかれていたことは驚きでもありました。

面倒だ、母親も自分の時間がほしい、と連ねてありましたが

実は、なんでもない、日々の作業が、子供のインスピレーションを育てる
大切な時間であることに、すこし気がついて欲しいと思いました。


子供を持たない私がいっても説得力はないと思うんですが

おぼっちゃんと過ごした時間の中で、彼の育っていくインスピレーション
学習能力の高さ、どれをとってもどの子よりもずば抜けていた
秘訣は、日常生活の中にあったのだと思います。


私と、おぼっちゃんの名前は、水と葉。

「あのね、ぼくとおねえさんはね、お水と葉でしょう、僕は水に浮かぶ葉っぱだね」

by 5歳。


詩的なこの一言に、

ぐっときたのでした。



7歳になった彼に会ったとき、二人でレストランで食事して
綺麗にお行儀よく、食べてしまった時に

お上手になりましたね、もうお姉さんのお手伝いいらないんだね、と
言ったらば

いつまでも僕が赤ちゃんだと困るでしょう?と切り返された時は

しゅん・・・としょげてしまいましたけど(笑)

by tubaki_hana | 2010-10-25 03:20 | 外国の暮らし